原状回復せずに退去できるって本当?
「まだ使える厨房設備、撤去するのはもったいない…」
「次に入る人が同じ業種なら、このまま使えるはず」
「原状回復工事に100万円以上かかるって言われたけど…」
そんなときに浮かぶ選択肢が、“居抜き”での退去です。
店舗・オフィス・テナントなどで、内装や設備をそのままにして次の人へ引き継ぐ方法。
うまくいけば原状回復費を大幅にカットでき、次の借主もすぐに開業できるという双方にメリットのある手段ですが、いくつかの注意点もあります。
今回は、居抜き退去を考えている人が知っておくべき基礎知識・進め方・注意点を解説します。
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■ 居抜き退去とは?
造作(内装・設備・什器など)を撤去せずに、次の入居者へ引き継いで退去する方法のこと。
飲食店や美容室、物販店などで特に多く、
• 厨房設備
• エアコン
• カウンターや什器
• 配線・照明
などを“そのまま残して”次の人が使う形になります。
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■ 居抜き退去のメリット
メリット | 内容 |
原状回復費用がかからない | スケルトン解体を免れれば、数十万〜百万円単位で削減可 |
設備や内装を「売却」できることも | 次の入居者に造作譲渡(有償)できれば売上になる |
次の入居者がすぐ営業できる | 開業準備の時短になるため、需要が高い業種も多い |
地球にもやさしい | 再利用=廃棄物削減、SDGsの観点でも注目されている |
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■ ただし、注意点もあります
【1】オーナー・管理会社の許可が必要
• 「原状回復義務」が契約にある場合は、交渉が必須
• 譲渡後の設備トラブルなどを懸念して拒否されることもある
【2】次の入居者が見つからないと成立しない
• 造作を欲しがる人がいなければ、結局原状回復するしかない
• 仲介会社や専門の「居抜きマッチング業者」を使うのが一般的
【3】譲渡内容・責任範囲を明確にしないとトラブルに
• 設備の動作確認や、破損の有無を書面で明確に
• 「エアコンは残すが保証なし」など、条件整理が重要
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■ 居抜き退去の流れ(基本ステップ)
- 契約書を確認する
・原状回復義務の範囲
・造作譲渡に関する条項がないか - 貸主・管理会社と相談する
・居抜き希望の旨を伝え、交渉スタート
・残せるもの/残せないものの明確化 - 次の入居者を探す
・不動産仲介会社・居抜き物件専門サイト・SNSなどで募集
・内見・譲渡金額・条件交渉などを行う - 譲渡契約を結ぶ
・譲渡対象リスト/金額/責任の所在を記載
・貸主の同意を得たうえで三者合意にするのがベスト - 明け渡し・鍵の引き継ぎ
・最終清掃・状態確認を行って退去完了
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■ 造作譲渡金の相場は?
譲渡できる金額は業種・立地・設備の状態によって大きく異なります。
状況 | 譲渡金の目安 |
飲食店(厨房設備が充実) | 30万〜300万円 |
美容室(内装がキレイ) | 10万〜100万円 |
オフィス(最低限の設備) | 無償〜10万円程度 |
→ 「造作譲渡できる=お金になる」とは限らない点にも注意が必要です。
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■ まとめ:壊す前に、“残せる”可能性を探ってみよう
居抜き退去は、費用を抑える手段として非常に有効です。
でも、それには「タイミング・交渉・マッチング」が必要で、早めの計画と情報収集がカギになります。
“壊すのが当たり前”と思っていた設備や内装が、誰かにとっては“欲しいもの”かもしれません。
だからこそ、退去が決まったら早めに:
• 契約書を確認
• オーナーと話す
• 業者に相談する
• 次の借主を探す
その一歩が、あなたにとっても、次の誰かにとっても、得になる退去方法をつくるかもしれません。