内装解体の会計・税務の基本知識
「テナントを退去するときにかかった原状回復工事、これは経費で処理できるの?」
「建物の解体費用って資産?損金?税務的にどう扱えばいいの?」
そんな疑問をお持ちの経営者・経理担当者の方に向けて、
内装解体費用の会計処理・税務上の扱いについて、実務に即した基本知識をご紹介します。
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■ 内装解体費用=“経費”になるか?
答えは、条件によって異なります。
• その年の費用として一括計上できる場合(損金処理)
• 固定資産として計上し、減価償却が必要な場合
• 資産除去債務(将来の撤去費用)として計上が必要な場合
それぞれのケースについて、順を追って解説します。
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【1】退去時の原状回復工事費用は経費になる?
はい、通常は“修繕費”または“原状回復費”として経費(損金)処理できます。
【対象になるケース】
• テナント退去時の原状回復
• 事務所や店舗のスケルトン工事
• 借主側の負担で行う造作撤去
【ポイント】
• 「修繕」としてその年の損金に計上可
• 請負契約書・見積書・領収書を残しておくことが重要
• 賃貸契約に基づく義務であること(契約書で確認)
【仕訳例】
(借方)原状回復費(修繕費) | 500,000円 |
(貸方)普通預金 | 500,000円 |
【2】建物の一部解体や大規模撤去は“資産”になる?
場合によっては、「資本的支出(固定資産)」とみなされ、減価償却が必要です。
【対象になるケース】
• 自社所有物件の一部解体・大規模改修
• 建物の構造変更を伴う工事
• 改装・リニューアルに伴う解体工事
【処理方法】
• 建物附属設備などに資産計上し、耐用年数で償却
• 処理に迷ったら税理士に相談を
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【3】「資産除去債務」として処理すべきケースとは?
近年注目されているのが、「資産除去債務会計基準」に基づく処理です。
【資産除去債務とは?】
将来的に解体・撤去・処分が必要な資産について、
あらかじめその費用を見積もって、負債として計上しておくという制度です。
【対象例】
• テナント契約で将来の原状回復が明確に義務づけられている
• 居抜きで造作を残しているが、将来撤去が決まっている
【特徴】
• 現在は費用がかかっていなくても、「将来の義務」として計上
• 長期負債として記載し、償却とともに費用化していく
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【4】解体費用と一緒にかかる“その他のコスト”も経費にできる?
以下のような関連費用も、内容次第で経費にできます。
費用項目 | 経費になる? | 備考 |
解体工事費 | ○ 原則経費(修繕費) | 契約に基づく場合 |
撤去する什器処分 | ○ 廃棄損などとして | 処分証明を残すと安心 |
清掃費・養生費 | ○ 工事に付随する費用 | 一体で請求されていることが多い |
敷金の償却分 | ○ 賃貸借契約の消耗分 | 「原状回復費相当額」として |
移転費用 | △ 引越し費は経費だが資産取得には注意 | 内容に応じて判断 |
【5】税務調査で注意されないために
• 領収書・見積書・工事契約書など根拠資料をしっかり保管
• 工事範囲と金額の合理性を説明できるようにしておく
• 経費計上が妥当か、税理士に事前相談すると安心
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まとめ:内装解体費用は「経費になる」が、内容次第で処理方法が変わる
原状回復やテナント撤去費用の多くは経費で処理できますが、
工事の内容・目的・所有関係によって、処理の仕方は変わります。
パターン | 会計処理 |
テナントの原状回復 | 修繕費・原状回復費として経費計上 |
自社所有ビルの一部解体 | 資本的支出(固定資産)扱い |
将来の撤去が決まっている場合 | 資産除去債務として計上・費用化 |
まずは「契約内容」と「工事範囲」をしっかり整理し、税理士とも連携して最適な処理を。
経費計上がしっかりできれば、キャッシュフローにも大きな安心が生まれます。