原状回復との違いもわかりやすく解説
「スケルトン渡しでお願いします」
「契約時は原状回復って書いてあったけど…?」
店舗やテナントの退去時、こうした言葉に戸惑った経験はありませんか?
一見似ている「スケルトン工事」と「原状回復工事」。
しかし、実際には工事の内容も費用も大きく違う、重要な区別です。
このコラムでは、スケルトン工事とは何か、原状回復との違い、注意すべきポイントまで、現場目線でわかりやすく解説していきます。
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■ スケルトン工事とは?

スケルトン工事とは、内装・設備・仕上げ材などをすべて撤去し、建物の構造躯体だけに戻す工事のことです。
いわゆる「コンクリートむき出し」「配管も全部撤去された状態」に戻すことで、次のテナントが自由に内装を作れる状態をつくります。
【撤去対象の一例】
• 天井材(ジプトーン、ボードなど)
• 壁材(石膏ボード、クロス、軽量鉄骨)
• 床材(フローリング、タイル、長尺シートなど)
• 設備機器(空調、照明、給排水、ガスなど)
• 厨房機器、什器類
• 間仕切りやカウンターなどの造作物
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■ 原状回復工事とは?
原状回復とは、入居時の状態(契約時の原状)に戻す工事のことです。
スケルトンに戻すこともあれば、内装の一部だけ撤去・補修して済むケースもあります。
【よくある原状回復の内容】
• パーティションの撤去
• 床材の張り替えまたは清掃
• 壁紙の補修
• エアコンや照明の復旧
• 店名サインの撤去
契約書に記された「原状」がどの状態だったかが非常に重要です。
「もともと壁があった」「エアコンが備え付けだった」など、契約内容によって原状回復の定義が変わります。
■ スケルトン工事と原状回復の違いを比較
比較項目 | スケルトン工事 | 原状回復工事 |
目的 | 次のテナントが内装を作りやすくする | 入居時の状態に戻す |
撤去の範囲 | 内装・設備すべてを撤去 | 一部撤去や補修が中心 |
費用 | 比較的高額 | 比較的低価格 |
解体後の状態 | コンクリート打ちっぱなし | 入居時と同じ見た目 |
誰が負担する? | テナント側(契約により異なる) | テナントが負担するのが一般的 |
■ よくあるトラブルと注意点
● 契約内容の確認不足
「原状回復=スケルトンだと思っていた」などの誤解はトラブルの元。
賃貸借契約書や覚書を必ず確認しましょう。
● オーナーとの認識のズレ
契約上は原状回復でも、オーナーが“事実上スケルトン”を求めてくるケースもあります。
事前に確認・書面化しておくことが重要です。
● 設備の所有権トラブル
厨房機器や空調機など、誰の所有か曖昧な設備は撤去可否を確認しましょう。
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■ まとめ:スケルトンか、原状回復か。それが最初の分かれ道
退去工事で最も重要なのは、
「自分がどこまでの範囲を撤去しなければならないか」をはっきりさせることです。
スケルトン工事か、原状回復工事かによって、費用・工期・工法のすべてが変わってきます。
契約内容を確認し、不明点はオーナーや管理会社と共有し、信頼できる解体業者に早めに相談することが、スムーズな退去への近道です。