退去後の2つの選択肢を徹底比較
テナントやオフィスの退去が決まったとき、まず頭を悩ませるのが「原状回復工事をどこまでやるか?」という問題。
でもちょっと待ってください。
そのまま「壊して終わり」にしてしまって、本当にいいのでしょうか?
実は、原状回復せずにリフォーム・転用・居抜きといった別の選択肢を選ぶことで、費用を抑えたり、収益につなげられる可能性もあるのです。
ここでは、退去後に取れる2つの選択肢──
「原状回復」と「再活用」について、メリット・デメリットを比較しながらご紹介します。
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■ 原状回復とは?
入居時の状態に戻してから退去すること。
スケルトン化、造作の撤去、壁紙・床材の張り替えなどを行うのが一般的です。
【メリット】
• 契約上の義務をきちんと果たせる
• オーナーとの関係が円満に終われる
• 次の入居者が自由にレイアウトできる
【デメリット】
• 工事費用が高額になりやすい(スケルトンなら坪3〜5万円)
• すべて撤去することで「資産」がゼロになる
• 再利用できる設備も処分対象になってしまう
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■ リフォーム・再活用という選択肢
退去と同時に壊さず、既存の内装や設備を活かして別の用途に転用したり、次の入居者に引き継ぐ(居抜き)といった方法です。
【選択肢の例】
• オーナーと交渉して造作を残す
• 次のテナントに譲渡(造作譲渡)
• リノベーションして他用途に転用(物販→事務所 など)
【メリット】
• 原状回復工事費を削減できる
• 次のテナントがすぐ決まりやすい(居抜き物件のニーズは高い)
• 設備や内装を「資産」として引き継げる可能性がある
【デメリット】
• オーナーの許可が必要(契約書に反する場合も)
• 古い設備・デザインが敬遠されることもある
• 譲渡交渉や調整に手間がかかる
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■ 原状回復 vs 再活用|比較表
比較項目 | 原状回復 | リフォーム・再活用 |
費用 | 高くなりがち | 状況により大幅削減可能 |
工期 | 比較的長め | 転用次第では短縮可能 |
契約との整合性 | 契約を守れる | 交渉が必要な場合あり |
資産活用 | ゼロに戻す | 一部残せる・売却できる可能性あり |
オーナー対応 | 明確でスムーズ | 合意・交渉が必要 |
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■ 判断のポイントは「3つの視点」
【1】契約書に“原状回復義務”の範囲がどう書かれているか
まずは契約書を確認しましょう。「スケルトン渡し」とあるなら撤去必須。
でも「借用時の状態に戻すこと」とだけ書かれている場合は、交渉の余地があるかもしれません。
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【2】オーナーの意向と協議できるか
オーナーが「次も同業者を入れる予定」という場合、造作や設備をあえて残したほうが喜ばれることも。
関係性が良好であれば、柔軟に対応してくれる可能性は高いです。
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【3】再利用価値のある内装・設備かどうか
シンプルで状態の良い内装、人気立地の厨房設備、エアコンやカウンターなどは、居抜き物件としての価値が高い可能性があります。
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■ まとめ:「壊す」だけじゃない選択肢を知っておく
原状回復は契約上の責任ですが、無条件に壊す前に、一度立ち止まることが大切です。
• 残せるものはないか?
• 再活用できる設備はないか?
• オーナーと交渉できないか?
• 次のテナントを見つけて譲渡できないか?
“壊す前に考える”ことで、工事費だけでなく、時間や労力も節約できることがあります。
解体業者や不動産管理者と相談しながら、あなたにとって一番「損のない選択肢」を見つけましょう。