DIYと業者の境界線をプロが解説
テナント退去やリフォームの際に、ふと考えることがあります。
「これ、自分で壊せば安く済むんじゃない?」
実際、SNSや動画サイトでも「内装解体をDIYでやってみた!」という投稿を見かけることがあります。
でも本当に、自分でできるものなのでしょうか?
今回は、DIYでできる範囲と、プロに任せるべき工事の境界線について解説します。
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■ DIYでできること:軽作業・撤去・片付け
DIYでも比較的安全に行えるのは、次のような軽作業です。
【1】什器・家具の撤去
カウンター、棚、テーブル、ラックなど、自分で設置したものなら問題なし。
ただしビスやアンカーを抜いた後の穴補修が必要な場合も。
【2】カーペットやクッションフロアの剥がし
カッターとヘラで対応可能。ただし、下地を傷つけないよう慎重に。
【3】壁紙(クロス)の剥がし
DIYで人気のある作業。きれいに剥がすにはスチーマーや専用道具があると便利。
【4】簡単な清掃・残置物の片付け
ゴミの分別・搬出は体力勝負。家庭ごみとして処理できる範囲に限るので注意。
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■ DIYでは危険 or 法令違反になる作業
一方で、以下のような作業は「絶対にDIYでやってはいけない」または「資格が必要」な領域です。
【1】電気・ガス・給排水設備の撤去
配線・配管の切断や撤去は、資格を持つ業者のみが許可されています。
感電や漏水事故、火災リスクもあり、DIYは非常に危険です。
【2】石膏ボードや壁の解体
構造体に影響を与えるおそれがある部分を勝手に壊すのはNG。
特に耐火壁や界壁(隣室との間の壁)は慎重に判断が必要。
【3】アスベストを含む可能性のある建材の撤去
1970〜1990年代の建物ではアスベストのリスクあり。
調査や処理は専門業者のみが対応できる法的義務があります。
【4】廃材の運搬・処分
産業廃棄物は「許可を持つ業者」しか収集・運搬できません。
自分で処分しようとすると、不法投棄とみなされる可能性も。
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■ よくあるDIY失敗例
• クロスを剥がしたら下地までボロボロに → 補修費が倍に
• 木製什器の撤去中に壁に大きな穴 → 契約違反で補修命令
• ゴミを自己処理しようとしたが断られ、廃棄物処理法違反に問われたケースも
“安く済ませよう”のつもりが、かえって高くつくことも珍しくありません。
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■ 判断に迷ったら「併用」という選択も
「全部プロに任せると高い」「自分でできる範囲はやりたい」
そんなときは、“一部DIY+一部プロ”という併用の方法も有効です。
たとえば:
• 家具や棚は自分で撤去
• 設備や壁の解体は業者に任せる
• 自分で掃除・残置物の仕分けだけする
など、費用を抑えつつ安全性も確保できます。
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■ まとめ:DIYできることには限界がある。だからこそ計画的に
「内装解体=壊すだけ」と思いがちですが、
実際は法律・安全性・周囲への配慮が求められる専門的な作業です。
DIYでできることもありますが、無理は禁物。
少しでも不安な場合は、まず解体業者に相談し、作業分担の提案を受けるのがベストです。