原状回復の判断基準と実務のリアル
原状回復の工事で、地味ながら判断に迷う代表格が「クロス貼替」です。
「入居時と同じように見えるけど、これって貼り替えが必要なの?」
「ちょっと黄ばんでるけど、自然な経年劣化じゃないの?」
「敷金でカバーされてると思ってたけど、別料金って言われた…」
退去時のトラブルでも“クロスの貼替費用”は揉めやすいポイントです。
今回は、原状回復におけるクロス貼替の判断基準・対応の実際・注意点を詳しく解説します。
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■ クロス貼替が必要になる代表的なパターン
以下のようなケースでは、貸主・管理会社から貼替を求められることが多いです。
- 喫煙による変色・ヤニ汚れ
→ 天井や壁の黄ばみ、臭いの付着は「通常損耗」とみなされず、借主負担での貼替対象となることが多いです。
- 目立つ汚れ・キズ・破れ
→ 落書き、油染み、ペットによる引っかきキズなど、通常の使用を超えるダメージも借主側での補修対象。
- 部分的に補修した跡が目立つ
→ 一部だけ貼り替えると色が浮く・柄が揃わないことも。全面貼替のほうが自然で安く済む場合もあります。
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■ 逆に貼替不要とされやすいケース
- 自然な経年劣化(色あせ・微細な浮きなど)
→ 通常の使用範囲での変化は、貸主側での対応となる(敷金充当 or 不要)ことが多いです。
- 家具・什器の背面にできた軽い押し跡
→ これも通常損耗とみなされ、貼替不要となる例が多数。
- 入居時からのキズや浮きが明らかに残っていた箇所
→ 入居時の写真が残っていれば、「もともとの状態」として主張可能。
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■ 判断基準は「契約書+現場の状態」
【1】契約書を確認
• 原状回復義務の範囲(「入居時の状態に戻す」とあるか?)
• クロス貼替が明記されている場合もあり
• 特約で“全面貼替義務”とされている場合は注意!
【2】現場での見た目・状態
• 管理会社や原状回復業者と立ち会いの上、写真やメモで共有
• あいまいなときは、一緒に判断することがトラブル防止に有効
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■ クロス貼替の費用感と面積目安
部位例 | 面積目安(m2) | 張替費用(目安) |
6畳の一室 | 約30~40m2 | 30,000~50,000円程度 |
壁一面のみ | 約5~10m2 | 10,000~20,000円程度 |
トイレ | 約8m2 | 15,000円前後 |
※材質・下地の状態・施工条件により変動します。
※タバコやカビなどの下地処理費用が別途かかることもあります。
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■ クロス貼替で失敗しないためのポイント
• 入居時の写真を必ず保管しておく(証拠になる)
• 原状回復業者に「部分貼替 or 全面貼替」両方の見積もりをもらう
• 大家・管理会社と立ち会い時に“このクロスはどうするか”明言してもらう
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■ まとめ:「きれいに見える」だけでは判断できない
クロス貼替が必要かどうかは、単なる“見た目”ではなく、契約・使用状況・状態の総合判断で決まります。
• 軽い汚れでも借主負担になることがある
• 逆に少しの色あせなら費用請求されない場合もある
• 全面貼替せずに部分補修で済むケースもある
原状回復を「言われるがまま」ではなく、一緒に判断・交渉する意識があれば、無駄な費用やトラブルを減らせます。
「このクロス、貼り替えますか?」の一言が、スムーズな退去への第一歩です。